チェックインに必要なのは本当に署名だけ? ~旅館業法と宿泊者名簿~
目次
チェックイン時の「名前を書いてください」って、どうして?
ホテルや旅館でのチェックインの際に、まずフロントで「こちらにお名前をご記入ください」と案内するのがというお決まりのチェックイン手続き。宿泊施設に勤めはじめた頃は「署名してもらうだけでいいんでしょ?」「いつも書いてるけど、これって何のため?」と疑問に思っていませんでしたか?長くはたらくなかで意味を知るもののひとつに、”宿泊者名簿がなぜ必要か”という問いがあります。
実はこの“宿泊者名簿の記入”は、ホテルや旅館が勝手にお願いしているわけではなく、国の法律にもとづいた大切な手続きなのです。まず覚えておきたいのは、
✔ 署名だけでは足りない場合が多い
✔ 必要な情報は法令で決まっている
✔ どの法令が適用されるかは宿の種類によって違う
ということです。
「じゃあ具体的に何を書く必要があるの?」
「どうしてそんなに細かいの?」
今回の記事では、そんな疑問にお答えしていきます。
宿泊施設によって違う“名簿に書くべきこと”を見てみよう ~大阪を例に
ここからは、「どの宿泊形態で、何を名簿に書く必要があるのか」を、分かりやすく整理していきます。ポイントは簡単で、宿泊施設のタイプごとに、宿泊者名簿に書くべき内容が違うということです。宿泊施設のタイプを大きく3つに分けるとするならば、以下の3つの法令のいずれにあたるのか、まずは確認してみましょう。
①旅館業法(ホテル・旅館・簡易宿所)
②特区民泊
③住宅宿泊事業法(民泊新法)
では、我が社の所在する大阪府を例にそれぞれ何が必要なのか見ていきましょう。あくまでも一例となりますので、実際に宿泊施設が立地する各行政区域の情報を、都道府県、市町村、管轄の保健所単位などで必ずご確認ください。
まずは共通ルール “これだけはどの宿でも必ず必要”
どの法令が適用される場合でも、共通して次の項目は必要です。
①氏名
②住所
③(外国籍で日本国内住所のない方)国籍・旅券番号
これらはすべての宿の名簿に記載が必要です。また、名簿は3年間保存する義務があることも全ての制度で共通です。さらに意外と知られていないのが、宿泊者本人が自筆で書く必要はないという点。お客様が書けない場合、宿泊施設側が聞き取って記入することもできます。
旅館業法の宿(ホテル・旅館など)で必要な項目
旅館業法では、次の情報が求められます。(2025年11月現在)
①氏名
②住所
③(外国籍で日本国内住所のない方)国籍・旅券番号
④連絡先
特区民泊で必要な項目
特区民泊では、次の項目が必要です。
①氏名
②住所
③(外国籍で日本国内住所のない方)国籍・旅券番号
④連絡先
⑤滞在期間(いつからいつまで泊まるか)
旅館業法の項目に加えて、「滞在期間」が追加されているところが特徴です。
住宅宿泊事業法(民泊新法)で必要な項目
①氏名
②住所
③(外国籍で日本国内住所のない方)国籍・旅券番号
④職業
⑤宿泊日
宿泊日という「何日に泊まったか」が必要になります。
保存期間
お客様に記入していただいた宿泊者名簿は、作成した日から3年間の保存を求められています。
宿泊施設の実務では「いかにスムーズにチェックインしてもらうか」が大切
ここまでで、「記入が必要なのは署名だけではない」「宿泊施設の種類によって書く内容が違う」「外国人宿泊者には特別な対応が必要」という基礎が分かりました。これを踏まえて、実際に宿泊施設がどんな工夫をしているのか、わかりやすくお話しします。
実務で困るのは「書きにくい名簿」「分かりにくい用紙」
宿泊者名簿は法律で決まっているとはいえ、お客様にとっては「初めて見る用紙」。記入欄が多かったり、説明が難しかったりすると、「これは何を書けばいいんですか?」という質問が増えます。フロントが混雑していると、スタッフはてんてこまい。
そこで宿泊施設側では、「書く欄を分かりやすく配置する」「こまやかな説明をする」「外国人向け案内フローを作成する」など、さまざまな工夫をしています。
紙の名簿は「代表者用」と「同行者用」を分けると楽
旧来からのアナログ方式であっても、記載いただく名簿を分けることで使いやすくなる例もあります。「代表者だけすべてを書く方式」だと、代表者も大変ですし、時間もかかります。別々にすると、同行者が自分の情報をスムーズに記入できます。
電子チェックインやPMSは“記載漏れ”を防ぐ救世主
今の宿泊施設では、紙だけでなく「電子チェックイン」も一般的です。宿泊者がタブレットやスマホで記入するため、「字が読めない問題が消える」「記入漏れが自動で防止される」「そのままPMSにデータが入る」というメリットがあります。これらは宿泊施設側にもお客様側にも嬉しい仕組みです。
Stayseeならチェックインアプリが無料で使える
ここで、具体例としてPMSの Staysee(ステイシー) を紹介します。Stayseeは、無料で使えるチェックインアプリがあることが特徴のひとつです。
*タブレットで簡単入力
*名簿に必要な項目が自動で並ぶ
*外国人宿泊者対応も可能
*記入データはそのまま保存
*3年間の保管もかんたん
これなら法律に基づいた名簿運用が自然とできてしまうので、「名簿の記載漏れ問題」をほぼ解消できます。もちろん、紙名簿派の施設にもメリットがあり、Stayseeから 代表者用・同行者用の名簿用紙を印刷 することもできます。
なぜこんなに名簿が大事なの?
最後に、「名簿ってなぜ必要なの?」をかんたんに整理しておきましょう。宿泊者名簿は、ただの“紙”ではありません。名簿にはこんな役割があるのです。
*災害時や急病時に役立つ
どの部屋に誰が滞在しているか分かれば、避難誘導や緊急連絡がしやすくなります。
*迷惑行為や犯罪防止にも関わる
何かトラブルがあったとき、いつ誰が宿泊していたのかを確認するために必要です。
*感染症対策にもつながる
万一のクラスター発生時、自治体が迅速に追跡できるようにするためです。
署名だけで終わらせないチェックインへ
この記事を通して、「名簿は署名だけではダメ」「記載すべき内容は法律で決まっている」「宿泊施設の種類によって必要な項目は違う」「外国人宿泊者は旅券番号などが必須」「名簿は3年間保存」などということが分かったと思います。
チェックインは、宿泊者が一番最初に体験する“おもてなしの場”です。名簿記入の負担をできるだけ減らしつつ、法律に沿った正しい運用をすることで、お客様にとってもスタッフにとっても心地よいチェックインが実現します。

- ステイシーのコールセンターを担当しているメンバーたちで、記事を書いています。ホテル・旅館のみなさまに役立つ情報を発信していきますので、よろしくお願いいたします。
- 2025年11月18日ホテルシステムチェックインに必要なのは本当に署名だけ? ~旅館業法と宿泊者名簿~
- 2024年11月7日ホテルシステムホテル管理システム(PMS)の比較
- 2025年3月26日ホテルシステムもう慌てない!ホテルチェックイン徹底ガイド
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